遺伝資源の取得の機会(Access)とその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(Benefit-Sharing)は、生物多様性の重要課題の一つで、Access and Benefit-Sharingの頭文字をとってABSと呼ばれています。「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分」は生物の多様性に関する条約の3つ目の目的に位置づけられ、この目的を達成するためのABSに関する基本的なルールが、条約第15条に規定されています。
名古屋議定書(正式名称:生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書)は、ABSの着実な実施を確保するための手続を定める国際文書として、平成22年10月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会合(COP10)において採択されました。
本議定書は、平成23年2月から平成24年2月まで署名のために開放され、91カ国及びEUが署名しました。その後、50カ国の締結を受けて、平成26年10月12日に発効し、COP12と併せて名古屋議定書第1回締約国会合(COP-MOP1)が開催されました。
我が国は、平成23年5月に名古屋議定書に署名して以降、我が国の遺伝資源の利用実態及び他国の措置内容を踏まえて国内措置について検討してまいりました。この結果、平成29年1月に政府において「遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する指針(以下、「ABS指針」という。)」の案を取りまとめました。
その後、平成29年5月10日に第193通常国会において名古屋議定書の締結について承認されたことを受け、ABS指針を公布(5月18日)するとともに、5月22日に受諾書の寄託を行って議定書を締結しました。
名古屋議定書は、受諾書の寄託から90日後となる平成29年8月20日に、我が国について効力を生じました。